白の質量/umineko
肩のあたりか
あの厳しさがこんなにももろく
私の前で崩れていく
私はその間ずっと泣いていた
祖父想いのひとりの孫として認識されたかもしれない
だがすでに大学生 大人である
おそらく
もっと別の場所に理由があった それは
死に目に会えなかった、とか
もっともっと話を、とか
どれも違う
私は
存在を
失うということに涙したのだ
もう
祖父を思い出すことはほとんどない
祖父の暮らしていた離れの家は
度重なる豪雨で浸水していた
雨漏りのその家に入るといつも
祖父の匂いがする
私は
存在を思う
空に帰った魂を思う
質量だけが丘に在り
残りの祖父は浮遊している
地球の質量は変わらない
ただ
魂だけが行き来する
私もたぶん残らない
私の書いた文字も
消える
消える
存在を思う
消えてゆく
私を思う
今なら
祖父といいお酒が飲めるだろう
そんな気がする
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