遊覧船ギグ/カンチェルスキス
 
に励まされることなんてないと思ってたんだけどさ」
 小便を済まし、今度飲む約束をして、トラック運転手はみんなと別れた。眠気も晴れ、下半身もすっきりした。いい気分だった。これからいい仕事ができる。オレの世界は狭かった。気にしなくてもいいことを気にしてた。タクシーの運ちゃんの言ってた通り、自分から地獄にはまりに行くことはない。トラックの運ちゃんって呼ばれたからってオレ自身の存在が損なわれるってわけじゃないんだ。簡単なことだった。
 自分の存在に自信を深めたトラック運転手は、だが、トラックに戻るまでに唐突に新たな問題に直面した。その考えは横切った瞬間、居座った。彼を一瞬にして侵蝕し始めた。頭を悩ませる、新種のウィルスみたいだった。
「オレは、『野郎』と呼ばれることもあるぞ」
 人は気軽に野郎と言う。


 




 
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