遊覧船ギグ/カンチェルスキス
 

 そりゃ、そうだ。「新幹線の運ちゃん」とは誰も呼ばないだろう。
 そして、さきほどまで鏡の前で手を洗ってた男二人が振り返る。いつでも宇宙に行けるような服装だ。どうやら彼らは宇宙飛行士のようだった。そのうちの一人が言う。
「私たちは、運転じゃありません。飛ばしてます。飛行士です」
 トラック運転手の答えはのんきだ。
「見える、見える」
「宇宙飛行士をデパートの着物の催し会場以外で見るのははじめてだ」
 タクシー運転手は興奮気味だ。紺のベストに修正ペンでサインしてくれ、とせがむ。嫁に自慢するんだろう。新幹線の運転士の男が少し嫉妬顔だ。ぶつぶつつぶやいてる。
「ビューンビューンなんだけ
[次のページ]
戻る   Point(2)