葡萄の夜/
石瀬琳々
このひとつぶに幸いあり
このひとつぶに不幸あり
不ぞろいに置いたそのつぶを
くちびるに含んで夢を見る
あのひとのくちづけを
あのひとのかんしょくを
私の恋はいまだ熟さない
舌で転がす青い酸味よ
あのひとのくちづけが
あのひとのさよならが
葡萄の夜は更けてゆく
ゆるく床に散らばる
そのひとつ ひとつ
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