森の経験/前田ふむふむ
 


森は永遠に、いのちの循環を生み続けるのですか、
森は永遠に、みずの慈愛を享受するのですか、
わたしたちは、永遠に森でありうるのですか。と。

風をゆく森の折り目は、落葉の頻度を高めて、
いのちの新しさを、堅い根を這うみずに、
隠そうとする。

ふたりは、たおやかに、森の流れに横たわり、
呼吸をみどりの鼓動に合せて、
ひとときの、あさい眠りをむさぼる。
清らかな肌が、草々の彩色を染めて。
季節は、激しく戯れて、更にしなやかな肉体を広げて――。

森は厳かに落日の仕度を整える。
ひとときを、消えゆく夏の未明に刻んで。
森の経験は、ふたりを乗せて、
繰り返される森の日記を捲る、旅を始める。
成熟した白い季節の上で。

戻る   Point(19)