天体寓話/恭二
す性質が有ることも、
自分で良く分かっていたからだ。
暫くの沈黙の後、太陽は、こう応えた。
「僕が、西の水平線に沈む頃、
君が、東の水平線から昇って来るっていうのはどうだい。
それなら、光だけは君に届くと思うよ。」
あくる日から、二つの天体は、別々に空に昇った。
あくる日から、二つの天体は、別々に水平線に沈んだ。
それでも月は、太陽の光を全身に浴び、闇の中で美しく輝いた。
太陽はその美しさを、見ることはできない。
数十億年たった今、西に沈む夕日が赤く染まるのは、
東に昇る美しくなった月の姿を、今でも一目見ようと、
無理に軌道に逆らい、全身が充血するからだ。
太陽は夜の月の美しさを、今でも知らない。
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