久しぶりに微笑んだ/千波 一也
 

静かにかじる

触れようとしたら少し驚いたが
触れてしまえば
おとなしかった



夕陽もそろそろ居なくなる頃に
そいつは何かを聞き届けたらしく
片耳をピクッと立てて
与える物の残っていない人間から離れていった

振り返ることもせず

現金なやつだな、と
なんだか笑えた

ところで今夜は何を食べようか、と
あるはずもない選択肢を掘ってみる

自由気ままなギブ・アンド・テイク

鼻歌なんかを楽しみながら
久しぶりに微笑んだ



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