久しぶりに微笑んだ/
千波 一也
が
静かにかじる
触れようとしたら少し驚いたが
触れてしまえば
おとなしかった
夕陽もそろそろ居なくなる頃に
そいつは何かを聞き届けたらしく
片耳をピクッと立てて
与える物の残っていない人間から離れていった
振り返ることもせず
現金なやつだな、と
なんだか笑えた
ところで今夜は何を食べようか、と
あるはずもない選択肢を掘ってみる
自由気ままなギブ・アンド・テイク
鼻歌なんかを楽しみながら
久しぶりに微笑んだ
戻る
編
削
Point
(15)