わたし/恋月 ぴの
コンパクトに映るわたしに
わたしは誰と尋ねても
何処まで行っても、あなたはあなた
としか答えてくれない
(何だかつまんないなあ
こうやって電車のなかでも鏡を覗き
アイラインなんか直してみるのも
ある日突然わたしじゃなくなって…
誰にでも変身願望ってあるのかな
(向いのおとこのひと、ちょっとイケメン
コンパクトをちょっとずらせば
青空がまぶしいぐらいに映ってる
それぐらい判っているよ
わたしだって子どもじゃないから
わたしはわたし
他の誰にもなれないことぐらい
(まさかスカートの中覗かれている?
山に登るひとは自分を登るらしい
化粧を直すひとってどうなんだろう
重いリュックの変わりに
バッグいっぱいにコスメを抱えて
(素足に視線がちくちく痛い
寝不足まぶたをシャドーで隠して
いつもと違う自分に見そうだったら
もういちどだけ尋ねてみたい
コンパクトをちょっとずらせば
ずっと遠くに見える山のどこかに
わたしを待ってるわたしがいる
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