ケリの親子        こうずまさみ/肥前の旅人
 
今年も休耕田で
ケリのひなが孵った
散歩帰りに犬が立ち入ると
キッキッけたたましい声で脅しかける

その様子をすぐそばの二階から
姪が眺めている
都会から遊びに来た彼女にとっては
新鮮な光景に映るのか
長いこと凝視めている

子どものいない姪にとって
義妹が妊娠したというニュースは
我がことのように嬉しい
欲しくて欲しくて
やっとできたという事実に
感動すらしたという

親鳥に見守られながら
雛たちたちは無心にあぜ道を散策している
 (黙ってればわからないのに)
妻が言う傍らで
ひときわ高い鳴き声が
平和を願う独唱のように
空気を振動させながら
親子のケリは
夕闇の中へすいこまれていった
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