灰色の波紋/結城 森士
 
向きに倒れ、何処かへ連れていかれてしまうよう、と泣いている幼子の声。目に見えない傷。
――――――――――――(目に見えない傷)
                      わたしは自分の身体が物凄い速さで宙に放り投げられるのを感じ、必死で布団に張り付いて脊髄はグルグルと大きな二重の円を描いていた、意識は床から天井まで上下に振れ、天井にぶつかってしまう。天井にぶつかってしまう。前後に大きく揺れる恐怖が到達点に来ると、再び薄暗い道路を歩いていた。

 酷い吐き気に見舞われながらもと来た道を引き返そうと振り向くと、目の前で唇だけの女性が何かを喋っていた。だが、何を喋っているのか理解することは出
[次のページ]
戻る   Point(3)