クラゲは青の向こうへ/ブルース瀬戸内
 
クラゲは無色を誇って
透明に酔って

クラゲは青色から逃げようと
存在に決着がつけられなくて

大海原の一角で
青から逃避しようと
上昇志向をあらわにします。

生命の原型のような
その無垢に過ぎる姿で

不可視に過ぎるものを求めて
海面に急接近します。

青の上に展開されるもの
青の上に約束されたもの

そんなものを漠然と描いて
ついに海面にその姿をうかべます。

海面の外に広がるもの
青の上に展開されていたもの
青に上に約束されていたもの

それは

一面に広がる青でした。
時空をとっくに飲み込んでいそうな
懐の深い深い青でした。

クラゲは青から青へ
逃避してきたのです。

クラゲは
海面から頭を半分出して
しばらく波に身をまかせて
上に広がる青を見て
下に広がる青を見て
何かを得心して
何かを覚悟して
何かに満足して

ちゃぽん、と
大海原の中へ戻っていきました。

その時、海面にできた波紋は
なんだか清々しい世界観の象徴のようで
遠くまで、遠くまで
広がっていきました。
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