ヴァンサン、夏の終わり/石瀬琳々
(ヴァンサン)
窓の外に君の姿が見える
やわらかい草を裸の足裏で踏みしめて
君はこれから川へ泳ぎに行くという
もう透き通った水は冷たいというのに
君は白い歯を見せて
銀葉(ぎんよう)アカシアの並木道へと消えてゆく
緑の水草が君の裸身に絡みつく
あぶくが立ち昇って
ダンスを踊っているみたい
ねえ 憶えているかい
こんな風に去年も見送ったじゃないか
夏の衰えた陽ざしを浴びながら
軽やかに手を振ったじゃないか
僕はこんな夏の得体の知れない
花粉にやられてぐずぐずいっていた
何の草?
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