緑の輪/木立 悟
草の原には緑の花が
常に誰かに呼びかけるように
異なる緑にまたたいている
山へ山へむかう道
途切れ途切れつづく道
雨の滴と羽虫がつくる
無音にひろがる水紋の夜
荒れ地を巡り かがやきつづけ
いつか消えてしまう光の軌跡が
静かに荒れ地を抱きしめている
気づくものなく抱きしめている
自らを抱くようにつくられる腕の輪に
見捨てられた魂は生い茂る
茎と葉のなかにまぎれ
見えかくれする緑の花
鉄の橋を導いてゆくひと
夜をやわらかくまとうひと
ななめうしろから見つめる頬
微笑みなのか
涙なのかわからない
赤く 小さく揺れる頬
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