「 きいろいし、み。 」/PULL.
一。
わたしの壁にはきいろいしみがある。
しみはわたしが産まれる前からあったしみで、
わたしの父がこの家に婿に来る前から、
ずっとそこにあったしみなのだと、
母は教えてくれた。
婆がいうには、
婆が爺をもらう前からもうそこにあり、
その頃は今よりもうすいきいろの、
しみだったのだそうだ。
わたしは爺を知らない。
いつか婆に爺のことを聞くと、
婆は壁を撫でながら、
こう教えてくれた。
「それはそれは白い肌をしたいい男だったよ。
肌が陶器のようになめらかでね。
あの白い手が、
あたしの頬に触れると、
と
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