○ = △/服部 剛
 
A には ○ が正解に見えていた 
B には △ が正解に見えていた 

お互いは頑(かたく)なに抱えたバケツから 
激しく水をかけあっていた 


ずぶ濡れなふたりの間に 
両腕を広げた人が現れ 
片方ずつ手を握り 
ふたりの間に橋を架けた 

( それぞれの手の中に 
( 一錠ずつわたした少し苦い薬には 
( 「信頼(声かけ)」
( という文字が刻まれていた 

気がつくと 
両腕を広げた人は消えていた 


それぞれの掌に残された薬を飲むと 

A は △ について考え始めた
B は ○ について考え始めた 

片手にぶら下げていたバケツを置いて 
ふたりはそれぞれの家に帰った 




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