訪問者/mac
犬が吠える
犬だか熊だか分らないが吠える
咽喉が千切れんほどに吠え立てて
何が悲しくてそんなに吠えるのか
じーさんの運転する軽トラが
一方通行の道を歩く程の速度で通り過ぎる
一方通行だが帰りも通る
ばーさんが
「ここいらじゃあ
イタチが出て屋根裏を走るから
夜は眠れねえ」
と独り言
井戸端会議も花開かない
「少子化で子供がいねえなんて
この辺りじゃもう何十年子供なんて
みてねえよ」
陽射しは地面に生えてる草をちりちりと焼く
ばーさんの打ち水は
一瞬にして蒸気と化す
それでも山の水で冷やしたスイカは
冷蔵庫に入れるより冷えるんだよなあ、ばーさん。
じーさんは手拭いで汗を拭きながら
久しぶりに笑った
犬だか熊だか分らないやつもスイカを貰って
やっと吠えるのをやめた
「じーさんばーさん久しぶり」
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