鉛音/蛙の子
 
皆、同じ場所に居た。
何もない同じ道を、同じペースで歩いていた。
時に笑いあい、時に励ましあい、時に喧嘩し、同じ時間を共有していた。

気がつくと僕は、皆の背中を見て歩いていた。
誰も振り向いてはくれない。
僕が後で歩いてることにすら気がついていない。
僕と皆との距離は離れていくばかり。

あんなに早足で、何を急いでいるの?
僕を置いていかないで。
1人じゃ何も出来ないんだ。
1人じゃとても不安なんだ。

思っていても口には出さない。
感情を表出させたら、僕は君たちよりも劣っていることを
証明するみたいじゃないか。
負けたくない。
負けたくない。
だから僕は歩くスピードを上げる。
必死で追いつこうとする。

それでも、僕は追いつけない。
あと一歩が届かない。

そうして僕は気付く。

皆のスピードが上がったわけじゃない。
僕が遅くなっただけ。
虚栄心と言う名の足枷を、自ら受け入れてしまったから。

足枷の重さは増していくばかり。




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