偽善の犠牲者/松本 卓也
 
溜息すら零せない
その瞬間に愕然とする
どこかで満足しているのだろう
終焉を望んでいるのだから

薄ら寒い笑いに包まれて
不要たる存在としての自己
無視と嘲笑の天秤は
変わらずに揺れ動く

僕は知らない
人々の脳裏に刻まれた
ちっぽけな執着の正体を

知ろうともしない
僕じゃないのならば
知る必要も無い

先の見えない空間では
巨大な秒針が浪費を刻む
何もかもが無駄で
何もかもに価値が無い

終わってしまえば良いのに
終わらせてしまえば良いのに
立てるべき証もすでに無く
守るべき誓いなど持っていない

目を背けられながら
一人ほくそ笑んだのは
善意の皮をかぶった
性根が見えた気がしたから

真夜中に声を潜めて爆笑し
偽善の裏で虐げられた贄である
僕の姿を鏡に映す

塗り固められた嘘の隙間と
他愛も無い欲求の矛先が
少し見えたにもかかわらず

何故だか泣いていた

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