輪舞(ロンド)/銀猫
雨が上がると
空気が透明を増して
夏の名残と夢とが冷まされ
水の中を歩くように九月
夏服の明るさが
どこか不似合いになり
息を潜めていた淋しさだとか
熱に乾いていた涙が
堰を切って溢れ出す
思わぬ場所でこころを悟られぬよう
少しずつ重ね着してゆく
九月
それは幸福な哀しさで
秋、と呼ばれている
藍が深くなる空の下
わたしの後ろに
影が延びて
やがて夜とひとつになる頃
秋は夜に生まれて
夏の記憶は朝ごとに淡くなる
九月の風は
伸びかけた髪を
結んでは解き、して
わたしの周りで輪舞を踊る
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