優秀の湖に眠る/蒸発王
 
幾度と無く
傷を負い
深く刻まれ
なお
其処に在ろうとする

彼女の美しさに
うっかり
墜落しそうになった


もしも彼女が痛みに泣くとすれば
絶対零度にさらされて
涙は氷になる

其れを見つけたいと
強く想った


それから
夢中になって
私は彼女を映し続けた
斑に空いた穴々は
それぞれ湖の名がつけられていて
静かな彼女のイメージにぴったりだった


私も
静かに
恋をしている


飛び続けて1年と半年

燃料は底をつき

だんだんと翼の力が抜けるのが解った


今夜


彼女に墜落(お)ちていく


沈む先は
優秀の湖
下見で写真も取っておいた
私が落ちて
また彼女には新しい傷が一つ増える
その痛みに
その悼みに

涙を流してくれたら


とても素敵だと思う




恋をしている


眠っても

恋をしていく


『優秀の湖に眠る』


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