定食屋の父さん/ZUZU
文し
僕より少し遅く来た父さんは
焼肉定食五百円を注文した
僕は失恋したばかりで
とても食べられないと思っていたのに
一週間で平気で
戻った食欲を
やっぱりもう
若くはないと気がついたり
ちらりと父さんを見ると
やっぱりテレビを
だらしなく見ているだけで
僕もいつかはこうなるんだろうかと
ひどくせつなくかなしくなり
ひとりぼっちの父さん
病院に行ってあげればよかった
温泉に連れて行ってあげればよかった
話をきいてあげればよかった
ただ酒をついであげればよかった
しょっぱいカツ丼のうえに
しょっぱい涙が落っこちて
僕はもう
わりばしを持つ手をさげてゆくしかなかった
父さんはテレビを見て笑った
親子あひるの
たわいのない地方ニュースだった
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