オオカミ少年/橘のの
 
 

やさしい顔の羊たちが
ゆるやかに淘汰され
餌を失った狼は
一匹、また一匹と
姿を消してゆく

そして
オオカミ少年たちもまたその存在の粛正を余儀なくされ、しだいに意味を失くしていった

狼が来たぞって叫んだところで、もう誰もふり向きはしない

いまや世界は狼なんかよりもっと恐ろしいものであふれてるのだから


遠くシベリアの地で薄っぺらな毛布にくるまり、凍える夜をやり過ごす


それが最後に存在を確認されたオオカミ少年の姿であり
誰もがその少年の名を
今も思い出せないでいる

知っているはずなのに
 
 
 
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