「 漬けられた夜。 」/PULL.
一。
バットマンの乳首は黒い。
そんなことを考えていると、
玄関のチャイムが鳴った。
テレビを消し、
けだるく返事をして立ち上がる。
足下がふらついた。
もう三日も寝ていない。
ずっと考えに取り憑かれている。
重い体を引きずり、
廊下を通り玄関に向かう。
床に積もった埃が、
一歩進むごとに、
ずるずると掃かれてゆく。
ようやく玄関にたどり着く。
扉を開けると、
白い制服を着た男が立っていた。
男が口を開いた。
「宅急便です。」
制服よりも白い歯が、
嫌みなぐらい眩しかった。
二。
[次のページ]
戻る 編 削 Point(11)