小さな湖のほとりで/ささやま ひろ
 
「もうすぐお別れです」

夏の妖精があいさつに来た

金色に輝いていた姿は
うすく半透明になっている
それでも確かな輝きを放ちながら
小さな湖のほとりへと帰っていく


素敵な夏をありがとう
また来年


約300年もの間
私は季節の変わり目に
こうして妖精たちとコトバを交わしてきた

ほんの小さな苗木だった私も
今では大地にしっかりと根を張っている
きっと私にも寿命があるだろう

妖精たちのさよならに淋しさは感じない
なぜなら彼らはまったくもって「生」に満ちているから

小さな湖のほとりには
妖精たちの城がある

夏の妖精は
光の余韻を残しながら
静かに消えていく

やがて秋の妖精へと生まれ変わるのだ

まぶしい輝きとともに

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