月に負け犬/粕身鳥
 
顔を引っぺがしてやろうかと思った。

そんな時、私はあるサイトで『月に負け犬』という曲を知った。
聴くと耳が痛くなった。
正に、今の私の心境だった。
誰にもわからないと思ってたそれを、見た事もない人間がズバズバと言い当てている。
認められた気がした。
ほんの少し、人が怖く無くなった。

次の日、私は学校のカウンセリングルームに行った。
久々の学校。久々の制服。久々の登校路。
怖かったけど、少しずつ進んだ。『月に負け犬』を聴きながら。

それから暫く経ち、友達が出来ると、心を開くことの喜びを知った。
くだらない話しが楽しかった。
疑う心や自分を嫌う心はまだ十分にあるけれど、それを忘れられる時間ができた。

私は社会に戻れた。
私の存在を確かめられた。あの一曲のおかげで。

今も不安な時あの曲を聴くと涙が溢れてくる。
何度でも私を認めてくれるから。
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