*黒い大地*/かおる
も
シーンと静まり返ったまま
実は泳ぐのや飛ぶのが苦手な命が
端然とある鯨の上で休むようになり
そして、混沌は分かれていった
空と海の境目は時々昔のように曖昧だけど
陸は鯨の形に見えませんか
雨をたっぷり吸った黒い大地には
鯨の坊やが眠っている
ギラギラの太陽に
しらけていってしまいそうな大地を
守る為にじっと佇み
アップアップな日常で
干涸びちゃいそうな夢や想いに蓋をするように
悠々と
赤く燃えていく空の向こうから
かすかに
母の子守唄が
聴こえてくるでしょう
坊や、よゐこだ、ねんねしな
ほら、入道雲のおじさんが
おしめりを連れてやってくる
遠く雷鳴に混じってとうさまのうなり声
我慢比べをする坊やを楽しませたいと
鳥が歌い花々は咲き乱れ
緑深くなる頃には
未来もゆっくり泳ぎだすでしょう
それまでずっとおやすみ、坊や
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