*黒い大地*/かおる
遥か悠久の昔、空と海と陸がまだ混沌としていた頃
全ての命は気ままに泳いで飛んで
果てもない混沌を駆け回るのは楽しかった
亀はいつの時代も競争に駆り出される性分なのか
ある時、亀と鯨が
どちらがずっとじっとしていられるか
我慢比べをしたんだとさ
最近になって兎を負かす事ができた亀も
あの当時はまだまだあおかった
雨の薫りに鼻がむずむずして
思わずくしゃみ百連発で
のっそり起き上がり動いてしまった
そんな亀の慌てぶりにも一向に動じず
鯨はどっしり悠然とあるがままに動かず
魚らしさはすっかり影を潜め
京の都になる為か
小さな命が彼の上を飛んだり跳ねたりしても
[次のページ]
戻る 編 削 Point(10)