ほしいのはあなただけ/逢坂桜
ある日いきなりあらわれた
「さぁわたしの手を取りなさい」
それは白く細い手で
燃えるようにあかい頬
その手はとても震えてて
「寒いんですか?」たずねれば
「夏が寒いわけないわ」
震える声で微笑んだ
「どうしてこの手を取らないの?」
いくぶん涙のまじる声
なおも震える白い手を
阿呆のように見つめてる
ついに涙が頬つたい
「あなたは手をとるだけでいい」
「あなたをもとめてるのだから」
覚悟を決めて「ごめん」と言う
求められても手は取れぬ
この恋まもるためならば
誰の涙もぬぐわない
そして彼女の恋に謝罪する
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