骨まで見たいと骨しか見たくないのあいだ/カンチェルスキス
 
 路地裏を歩いてて気づいたのは、街の電線が全部切れて垂れ下がってることだった。
「どうりで腹の調子がおかしいと思ったんだ」
 おれはつぶやいた。夕刻前。思い出した。花沢さんとの昔のやりとりを。
「街の電線なんか全部切れてしまえばいいのに」
 とおれはそのとき言った。
「何で?」
「おもしろいだろ。そっちのほうが」
「確かにね」
 今になって実現したわけだけど、おれの隣には花沢さんはいなくて、腹痛。
 せっかくだから垂れ下がってる電線を触ってみた。何というか、すげえ刺激的な感触だった。通りかかった自転車の女子高生たちがしゃべってるのが聞こえた。
「ねえ、さっきのあの人。一瞬だけど
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