夏/葉leaf
 
少年の庭に咲かれた一輪の花
匂われて
光られて
やがて散られてゆく
そんな花の花
の花の内側を醒ましてゆく
夏の繊毛
角膜
破瓜
少年は不安によって
空間を把握する
不安の立面に鋭角する
羞恥の口唇 
少年のすべては皮膚の光沢
少年の空洞には
夏の爪たちが散らばり
世界の枝葉が粉々になる

少年は
肉体を閉ざすことに
飽きている
精神を分かつことに
倦んでいる
肉体でも精神でもないなにものかの
航跡を
射影を
円環を
拳の中に蓄えて吸い込んでいる
落下する少年のまなざしを受けて
夏は世界と媾合し
蒸気を焼き
色を焼き
少年の質量を焼く
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