ぶっく/たもつ
 


本が泣いてわたしになる
わたしになってわたしは
栞を探している
手を伸ばすとその向こうで
むかし弟をしていた人が
雑草を抜いている

外には他にも生きものがいて
窓という窓は
その呼吸でくもっている
半年の間町内会の書記を務め
あとは泣かなくなったその人のために
かわいそうなお話を
たくさん作った

抜いた雑草を栞にしてあげる
その人は言ったけれど
最初からそんなものは生えていない、と
わたしだけが知っているので
とても申し訳なく思う
何度も頭を下げ
あとがきを呟いている
わたしの声が聞こえる


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