寂しかったんだね/千月 話子
風を受けながら
行く 足元に
いつも触れるものは何か
今日こそはと 目を凝らす
同じ歩調で歩いているので
手を添えていた 懐かしい君と
目が合った
ああ、寂しかったんだね
バランスを崩して
爪先で踏んづけた
「きゅう」と鳴く君
でも すぐに笑った
恥ずかしそうに
くしゃっと 笑った
本当は少しだけでも 話したいんだ
本当は もう怒ってないよと
手を繋ぎたいんだ
本当は 君に手紙を書きたかったんだ
いつも いつも いつも
ああ、寂しかったんだね 私達
分かり合えた 今日の風は爽やかに吹き
何となく 思ったんだ
秋の夕暮れは
心 健やかな時に見るのがいいと
君もきっと そう思うよね
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