寂しかったんだね/千月 話子
冷蔵庫から ほろ苦い
コーヒーゼリーを取り出した
冷風吹きすさぶ 一番上の段
甘いフレッシュの上で
体育座りしている
君を見つけたのは
午後3時
ああ、寂しかったんだね
今日はまだ
一言も 話してないんだ
絞り切れないモップから
水臭い匂いがした
淀んだ教室の窓を全開にして
掃除用具入れを開けると
隅っこのほうで
君が 泣いていた
ああ、寂しかったんだね
喧嘩した昨日 振り返らず
振り返らずに 今日も過ごした
顔見知りと言葉を交わす 夕方
あちこちで談笑していた
朝よりも穏やかに歩く歩幅で
少し冷めた風を
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