みどり いし みどり/木立 悟
 



曇が曇に臥せ
金いろは
やわらかなひとりでいる


沼には醜い魚がいて
釣られては放され
土になる


石は
緑の向こうの水に気づかず
石ばかりを見つめてきた


鴉は 笑うことが少ないので
鴉にぜんぶ
まかされつつある


緑は葉の裏
道の影にまたたき
何かを奏でようとして抑えている


霧は低く
猫はいない
道に つながっていかない


石は覆われ 艶やかになる
どこまでも
蒼に気づかない緑


何年も 訪れるものなく
取り上げられた
空に近い草地


着く舟のない舟着き場
水紋と水紋の重なるさま
色は 減りつづけている


空が鳴る
錆びた蛇口
しずくを過ぎる


ふるえ伝うふるえ
風 後ろ姿 歩み
祈りのない石


沼の向こうの金いろ
水にだけ映り 結ばれる手
午後を見つめつづけていた















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