笑顔/長月 猫
窓に映る自分を見てた
隣の彼女は何かと話し掛けてくる
向かいのおばさんは世間話に興じている
何もかもが嫌だった
何もかもが鬱陶しくて……
自分でもわからないものに苛立っていた
ふと……
彼女がこう言った
「貴方の笑った顔、見てみたい」と
そういえば最近笑った覚えがない
最近どころかもう長いこと笑った記憶がない
何故かそれが笑えた
何故笑ったのかもわからない
でも……
それでもいいと思った
久しぶりに笑ったせいかこれでいいと思った
突然笑い出した僕に彼女は驚いている
「何故」なんて考えるのはやめた
理由なんて必要ない
僕が笑ったという事実はそこにある
それでいいと思った
戻る 編 削 Point(1)