晴れた灰の日/木立 悟
 




蛾に生まれたかったものが紙に生まれて
灯りのそばにじっとしている
葉の波が
聞こえては消える



嵐は水の鳥のあつまり
道の先にいる空は
蒼にむらさき
森と同じ背



空のすみのざわめきが
葉に生まれたかった声のようにはじけて
片目の緑に涙ぐむひと
遠く深くに月を見つける



灰の上に灰を立て
幾度も幾度も崩している
嵐から かがやくうたが
降りつづいている



花のないところに花が落ち
皆に笑われ 毒になった
花と同じものだけが
涙に触れても死ななかった



見えない光の乗り物が
かたちの影を残して飛び立ち
うたと声を乗せたまま
空のすみを巡りつづける












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