階段昇りトレーニングマシーン/神樹
 
しないのと同じだと気づく。
森の奥でねずみの尻ほど注目をあつめずに倒れる木と同じだ。
何をしたって意味が無い。誰も気づかないのなら、人生は要するに巨大なゼロだ。
無だ。
サイファーだ。

未来への不信が、過去を忘れがたくする。
大人達がガレージセールで考古学者よろしくの自分の子供時代の製品、例えばキャンディーランドやツイスターといったオモチャを掘り出すのは、怯えているからだ。がらくたが聖なる遺物になる。ミステリー。デート、フラフープ。ごみ箱に投げ込んだものにふいにノスタルジーこみ上げるのは、進化を恐れているからだ。成長し、変化し、体重を落とし生まれ変わり、順応する。
変化は果てしなく続くことを思うと、人が死に憧れるのは、何かを完全に終える唯一の手段だからだと思えてくる。

今、ボクは百三十階を超えたところだ。

既存のパラダイムのあちこちに穴があく。
平凡なもの全てが万能のメタファーになる。
万物の奥に潜む意味が不意に明らかになる。
何もかもがやけに意味ありげだ。
全てがやけに意味深だ。
あまりにも真実だ。




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