階段昇りトレーニングマシーン/神樹
 
最初の五十階を昇っただけで、ボクの吸い込んだ空気は、ボクの役に立つ前にさっさと出ていってしまう。両足はボクの後ろにすっ飛んでいってしまう。心臓は、ボクの肋骨に内側からぶち当たっている。

現代人の天国へのステアマスター

上に上に昇っているのに、ちっとも進んでいない。進歩しているという幻想だ。人はそれを癒しと信じたがる。ただ、人が忘れやすいのは、何処へも行きつかない旅も、やはりたった一歩踏み出すことから始ると言うことだ。

透明なビニール袋入りの、ハニー・ロースト・ピーナッツのミニパック、それがボクの今の肺の小ささだ。
八十五階を超えると、空気はそれくらい薄くなる。両腕の往復運動を繰
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