階段昇りトレーニングマシーン/神樹
最初の五十階を昇っただけで、ボクの吸い込んだ空気は、ボクの役に立つ前にさっさと出ていってしまう。両足はボクの後ろにすっ飛んでいってしまう。心臓は、ボクの肋骨に内側からぶち当たっている。
現代人の天国へのステアマスター
上に上に昇っているのに、ちっとも進んでいない。進歩しているという幻想だ。人はそれを癒しと信じたがる。ただ、人が忘れやすいのは、何処へも行きつかない旅も、やはりたった一歩踏み出すことから始ると言うことだ。
透明なビニール袋入りの、ハニー・ロースト・ピーナッツのミニパック、それがボクの今の肺の小ささだ。
八十五階を超えると、空気はそれくらい薄くなる。両腕の往復運動を繰
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)