さよならの陰影/新谷みふゆ
 
くちなしの花が咲き終えようとする頃に
空はセロファンのように震え
雨粒をくわえた鳥がひと足先に海へと向かう
砂浜に音も無く降る雨が
そこから遠い鉄塔の下で匂っていた

しだいに背の高くなるとうもろこしが
夏へは連れて行けないと諭すように
濡れたあたしを隠していく

バランスはいつもよく保たれている
なのに雨の日は空も海もなくなり
空気だけになってしまう
舟も鳥もあたしも動かずに ただ遠くを見ていた

いつもいつも あたしのバランスは遅れている
とうもろこしの陰から飛び出した
乱暴に人形を握ったあたしが
大人のような顔をして走り去っていく

知らない・・・ な
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