八月の病室/結城 森士
 
白く沈黙する病室の内で
遠くに寝ているあなたと共に
403号室は透明に生まれ変わる
ベッドは意味も無く回転している

風は、呼吸もせず感情も持たずに
無機な白いカーテンを翻すだけである
看病するベッドから濁った街並みが見渡せる
私はあなたの傍へ寄ったが
あなたは話そうとしなかった
自由は窓いっぱいに広がっていたが
病室にはいずれのような自由は見つけられなかった

・・・白く沈黙する病室は無言の内に終わり
・・・帰途モノクロの街では太陽が沈む

あなたの白く乾いた顔を打消す程に
私の見た太陽は涙の様に潤んでいる
意味を持つことを強要された太陽が
街に溶けていく場所で
私の足も殺されていく

低下するようにスロープを離れる太陽
私は倒れるように坂を降りていく


今でも
あなたの眠っているベッドは
意味も無く回転しているのか
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