明るい雨の昼下がりは/たりぽん(大理 奔)
空を飛びたいなど思わない
眠ってしまおうとも思わない
そんな明るい雨の昼下がりは
激しく窓ガラスで弾けて
つたい落ちる滴を
ずっと、ずっと見ていたい
大切に飼っていた金魚を
はじめて死なせてしまったときの
天気を、思い出せないでいる
生きている私は
いつの頃から死んでいっているのだろうか
ずっと、思い出せないでいる
とぎれめのないものに名前を付けず
庭の隅で動かなくなった
蝉を指さして
、生きている、といってみても
それがいつから死んでいったものか
思い出せないので
雨の中、蝉のように鳴いている
枝々を指さして
、死んでいる、ともいってみる
さあ、もう
どちらでもいいよね
明るい雨の昼下がりは
窓ガラスで弾ける滴を
ずっと見ながら
空を飛びたいなどとは
思わない
だから
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