遠い下着/たもつ
 

香ばしい匂いがして
私を育ててくれた人が
パンになってる
押せばふかふかするくらい
焼きたてだった
少し離れたところに
積まれた下着に向かって
丁寧にお辞儀をしている
どこが手か足かもわからないのに
礼儀だけはいつまでも
忘れることができないのだ
きれいなパンになったんだね
そうなの?きれいなものは皆パンなのね
かつてその人がしてくれたみたいに
下着を一枚一枚たたんだ
さっき見た庭の雑草の類は
明日にでも抜くことにしよう
多分その後で
泣いてしまうんだろう


戻る   Point(11)