生 /九谷夏紀
ああ これは
そう これは
圧倒的な、圧倒的な緑だ
辺りをぐるりと見渡しても
密集した木々
生きている緑
それだけの世界だ
明け方までの雨を受けてだろうか
濃緑の中からよどんだ空へ向かって
白い煙が立ち昇る
私は
私とこの緑だけの世界で
この生命力に完敗して眠る
格闘の果てにぼろぼろになって眠る
それはどれだけ心地よい眠りだろう
そして夜明けには
またまぶたを開けて一面の緑と再びまみえる
それはなんと心地よいめざめだろう
その朝に
あの緑は私にやどる
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