朝、後姿/たもつ
 
僕らは空気を育てた
空気を育て空気と遊んだ
外を連れて歩くと
人はそれを風と呼んだ
空気は僕らを食べて育った
食べられて僕らは
その大きなお腹のようなところで
何度も生まれかわった
何度生まれかわっても
手をつなぐことができた
ある日僕だけが
生まれかわらなかった
君は何度も生まれかわり
僕は何度も生まれかわらなかった
君は小さな石に僕の名を刻んだ
お墓みたいだ
僕は笑ったが
マタニティクリニックへとゆっくり歩く
君の後姿が
朝の空気を伝わってくる


戻る   Point(16)