僕は今日生まれた/結城 森士
木々が音を立て死にゆく
睡眠の音さえ失せる
夏の日々
僕は今日生まれて
昨日死んだ
死体の様に冷たいシーツの上で
僕はさっきまで倒れこんでいて
息をすることさえも苦痛だった
ところで
昨日までの僕は
何も知らなかった
もしかしたら無意識に
貴女を刺していたかもれない
そしてその結果
貴女は僕を殺した
ところで
貴女は昨日まで
何も気付かなかったが
僕は幾度と無く切り刻まれ
そしてその結果
貴女は僕を殺した
赤い静寂の季節に
僕は今日生まれて
昨日死んだ
夕焼けの沈む道で
貴女が僕を
冷たく暑い一本道で
僕は貴女に殺された
生まれ変わるのなら
鬱陶しい熱気の中で
蝉の抜け殻が鳴いている
静かなる夏の日々
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