夜とふるえ/木立 悟
頭のうしろの音を聴く
揺れるかたちの音を聴く
小さくとどく濡れた羽
したたる色のうたを聴く
夜に向かってひらかれた窓
さみしい灯を倍にする
縦に流れる部屋の内側
誰もいない部屋の内側
風がやわらかな光を揺らし
映るはずのものを散らしている
表情の無い窓のつらなり
灯より明るく道を照らす
同じ色をした石と空
同じ方角を見つめている
次の風 また次の風
目のなかの石を削る風
発つものがあり 戻るものがある
教訓もなく 寓意もなく
ただひとりのせつなさがあり
灯の尽きた道にたたずんでいる
夜に目覚めた瞳から
かけらは水に降りそそぎ
羽のかたちに沈み重なり
途切れてはつづくうたを唱う
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