感受性応答セヨ(お題)/結城 森士
 

私は倒れている
私の左手は破壊されている
私の薬指は錆付いて動かない
先ほど玄関の扉から入ってきた男が呟いた
「お前は存在の無意味だ」
私は倒れている

私の部屋にはかつて私の写真があり
写真の中の私は壊れた私に微笑んでくれた
私の部屋にはかつて私の鏡があり
鏡の中の私は壊れた私を消してくれた
(時計の針は止まってしまったが)
今白い壁しかない無機質の部屋で
私の左腕は発信している
私は壊れている

窓から青い都会の夜景が見えるので
私の記憶は軽やかに玄関を出て
自転車で光に追いつき
初めて見る都会の光に
私の左手は受信した
そして
廃棄処分を言い渡された

隣の部屋から
楽しそうな声が聞こえる
私はいつまでもその声を聞いていたかった
私はいつまでもこの小さな部屋で倒れてたかった
私の左手も薬指も
感情も
涙も無い

すっかり暗くなった私の部屋で
私は崩壊の時を待っている
もしくは
受信を



「感受性応答セヨ」は【即興ゴルコンダ】のお題です。発表しました

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