虫の女王/佐々宝砂
蚊柱の中でこぼこの肌さらして立つ
蚊よ虻よ好きなだけ
私の血を吸うがいい
痒みならば感じることができる
傷を癒やすためにではなく
傷口を広げるために
ふたまたにわかれた赤い舌が
私の傷をなめた
あの感覚はもはや遠いが
酸っぱい雨のなか
私はひっそりと焚火をする
虫が求めるままに焚火をする
明るく輝かしい炎でないのが悲しい
虫は不満かもしれない
私に提供できないものは多いのだが
虫は私を買いかぶりすぎる
もうじきに夜が明けるだろう
天幕を張るな
薬を撒くな
そんなことをせずとも虫は死ぬ
私が殺す
そして君たちが残るだろう
無臭の花咲き乱れる楽園
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