魚になりたかった人/
八布
流れる水の哀しい感触に運ばれて
街の隅にたどりついた
前世の匂いのする風が
頬と首筋を等しく撫でた
桃の薄皮のような
日に焼けた 心細い皮膚を
誰かに引っ掻いて欲しかった
痛がりで 嘘つきな
子供のような手つきで
変わっていくもの
変わらないもの
来し方 行く末
魚になりたかった人は
魚になれたのだろうか
ここの匂いは薄すぎる
水のように薄すぎる
涙目で光を曲げて
幸せな空想に溺れる
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