ビニールシート/霜天
物置の中では
今日も途方に暮れたものもの、が
自然な姿で融解しあっている
主人は今日も不在だった
あと何年、ここに居ればいいのだろう
ありがとうの行き先を
いつも間違えている気がして
三色のビニールシートは
風にはためく姿を夢見て
気が付けば朝
古い本の上に眠って
埃の吸い付く音を聞く
言葉は零れていかないだろうか
主人は明日も不在だった
緩やかな雨音が
遠い斜面を滑り落ちて
落下する記憶に重みを与えている
拍車のかかる、夏に
止まった時計
やがて、世界は開くとしても
暮れるということは
ゆっくりと離れていくこと、だろうか
主人はそれでも不在だった
夏が少し質量を増して
動かない部屋は眠りを忘れる
記憶はどこに着地するのか
こんなにもやさしい世界の果てに
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